どうも、マルタです。
今回は、小説版「言の葉の庭」のネタバレと感想をつづっていきたいと思います。

「言の葉の庭」は2013年の5月に映画として世の送り出され、その後を追って小説化されました。
※映画「言の葉の庭」のネタバレとあらすじはコチラで解説しているので、「なんのこっちゃ?」という方は、一度読んでみて下さい。
※リンク先にてネタバレ含みますので、閲覧にはご注意下さい。
やはり、小説版だけあって、映画でのキャラクターの動きや心理描写を細かく表現しきっていますね。これぞ小説の醍醐味!
また、出てくるキャラクターも増えており、「映画→小説」の流れで手に取ってもらうと、納得ができて楽しめるのではないかと思います。
逆に、小説→映画は少し物足りなさを感じてしまうかもです(汗)
実際に、小説の最後のあとがきにはこう記されていました。
原作となる映画は孝雄と雪野ふたりの視線のみからなる四十六分の中編だったが、本小説版では語り手を増やし、映画であったとしたらおそらくはとても二時間に収まらないボリュームで、新たに組み立て直しました。
新海誠 あとがき一部引用
この事からも、原作の映画のストーリーは忠実に再現しながらも、細かく、そして奥深さを増しています。
映画で見ていた、孝雄や雪野のキャラクター像が変わってしまうぐらい、複雑な心理状況を見事に「言葉」で表現しているなと感じます。
今回は、小説版「言の葉の庭」に描かれてた、映画版では公開されていない内容も踏まえながら、感想を綴っていきたいと思います。
※以下ネタバレを含みますので、閲覧にはご注意ください。
目次
小説版「言の葉の庭」のキャラクター一覧
映画版に比べて、登場キャラクターが増えているので、ご紹介します。
言の葉の庭に出てくるメインキャラクターです。
高校1年生。15歳。靴職人を目指している。
靴職人の専門学校に行くために、高校に行きながらバイトもしている。
孝雄が通う高校の古典の教師。27歳。
現在は休職中。退職予定。
社会人。26歳。
夢を追いかけている弟、孝雄を羨ましがりながらも、少し嫉妬している。
口癖は「十代の目標なんて3日で変わる」
孝雄が通う高校の体育教師。
みんなから恐がられる典型的な熱血教師。
かつて雪野と交際していた。
孝雄と同じ高校の3年生。
雪野を教職から追い出した本人。
しかし、その行為に至った背景は複雑で、罪意識を引きずっている。
母の手一つで、翔太と孝雄を育てた、秋月家の母。47歳。
12歳年下の彼氏がいる
小説版は、上記の6人のメインキャラクターがそれぞれ語る作品になっています。
小説で使われている言葉にこだわりを感じる
今回の小説版「言の葉の庭」を読んでみて、感じたことは、「作者は言葉の選択にかなりこだわっている」ということです。
孝雄と雪野がお互いに歌う短歌だけでなく、小説内で使われている「言葉」のチョイスが独特なのです。
例えば、
思慮深い長い睫毛(まつげ)には鉛筆だって乗りそうだった。
世界とぴったりとくっついている
たっぷりとした雨の中で、鮮やかな紫色はまるで発光しているよう。
花びらに溜まってはひっきりになしに落ちる、コロコロとした艶やかな雫がたまらなく可愛い。ますで藤の花に心があって、喜びが抑えきれずに溢れ出しているみたいだ。
など、表現の仕方が美しいなと思うのです。
映像で表現できない場面を、きわどい表現で緻密に表現されているようですね。
キャラクターそれぞれの視点から物語が描かれている
登場キャラクターが、小説版だと6名。
それぞれの視点から物語が構築されていて、映画に比べるとより深みが増しています。
もちろん、映画単体でも楽しめます。
映画の場合は、美しすぎる映像と、キャラクターの複雑な反応を目で見て、映画が終わったあとは感情的な余韻が残ります。
しかし、小説の場合は映画では語られていない、真実まで描写しているので、感情的な余韻を言語で、論理的にほどいているので、キャラクターが複雑な反応を示す背景や理由がわかります。
キャラクターを見透かすような気分になります。
「孝雄って、映画で見る以上に大人びてた考えかたをしてるんだな」
「雪野ってこんな子供っぽい一面があるんだ」
「映画の何気ないあのシーンにここまでの意味があったとは」
など、何度思ったことか・・・(笑)
それぞれのキャラクターの視点から語られる物語はかなり深いし。面白いです。
短歌が増えている
小説版で語られる短歌は、孝雄と雪野が歌う短歌以外にもあります。
これらの短歌が節の合間に挿し込まれていて、小説全体の文学要素をいっそう引き立てています。
全体的に古風な作品になっています。
以下ご紹介します。
うらさぶる 心さまねし ひさかたの 天(あめ)の時雨の 流らふ見れば
訳:はてしなく広がる大空から時雨がはらはらと流れ落ちるのを見ると うら寂しい思いが胸いっぱいに広がる。
第一話 雨、靴擦れ、なるかみの。ー秋月孝雄より引用
雷神(なるかみ)の しまし響(とよ)もし さし曇り
雨も降らぬか 君を留めむ
訳:雷が少しなって、曇って雨でも降らないだろうか そうすればあなたはいてくれるのに
第二話 柔らかな足音、千年たっても変わらないこと、人間なんてみんなどこかおかしいー雪野より引用
目には見えて 手には取らえぬ 月の内の
桂のごとき 妹(いも)をいかにせむ
訳:目には見えても手にとることのできない 月の中の桂のような 愛しいあの子をどうしたらいいのだろう
第三話 主演女優、引っ越しと遠い月、十代の目標なんて三日で変わる。ー秋月翔太より引用
我がやどの 時じき藤の めづらしく
今も見てしか 妹(いも)が笑(え)まひを
訳:愛しいあなたの笑顔を庭に咲いた季節外れの藤のように めずらしく今も見たいのです。
第四話 梅雨入り、遠い峰、甘い声、世界の秘密そのもの。ー秋月孝雄より引用
あかねさす 紫野行き(むらさきのゆき) 標野行き(しめのゆき)
野守(のもり)は見ずや 君が袖振る
訳:あなたが袖をお振りになるのを、あかね色の紫草の生える野を行き、標野を行ったり来たりして、野の番人が見るではありませんか
第五話 あかねさす、光の庭の。ー雪野より引用
ますらをや 片恋せむと 嘆けども
醜(しこ)のますらを なほ恋ひにけり
訳:立派な男子のますらおであるわたしが こんな片思いをするなんて
嘆いてみてもみっともないますらおだ ますます恋しい
第六話 ベランダで吸う煙草、バスに乗る彼女の背中、今からできることがあるとしたら。ー伊藤宗一郎より引用
世の中の 苦しきものに ありけらし
恋に堪(た)へずて 死ぬべき思へば
訳:恋に苦しみ 死にそうな思いをしているので、この世にある苦しいものであるようですね
第七話 憧れていたひとのこと、雨の朝に眉を描くこと、その瞬間に罰だと思ったこと。ー雪野より引用
雷神(なるかみ)の しまし響(とよ)もし 降らずとも
我は留まらむ 妹(いも)し留めば
訳:雷がスコだけ鳴って、雨なんて降らなくても 私はここに留まるよ
あなたが望むのならば
第八話 降らずとも、水底の部屋ー秋月孝雄より引用
夏の野の 繁みに咲ける 姫百合(ひめゆり)の
知らえぬ恋は 苦しきものそ
訳:夏の野の 繁みに咲く姫百合のように 相手に知ってもらえない
秘めた恋は苦しいものです
第九話 言葉にできず。ー雪野百香里と秋月孝雄より引用
石走(いわばし)る 垂水(たるみ)の上の さわらびの
萌え出づる春に なりにけるかも
訳:岩の上をほとばしる 滝のほとりのワラビの新芽が、萌え出る春になったのだなぁ
第十話 大人の追いつけない速度、息子の恋人、色褪せてくれない世界。ー秋月怜美より引用
その後の2人が描写されている
映画のラストは、雪野は実家の四国に戻り、孝雄と遠距離になります。
それでも、バイトで資金を貯め、雪野の為に靴を作ることを決意するところで終わります。
小説版ではその続きがあります。
孝雄は一通り、靴を仕上げて、母親の怜美に見せます。
「趣味程度ならよくできていると思う。しかし、客観的に見れば、まず売れない。すぐにダメになるだろう」と怜美は1人の女性としての厳しい意見を孝雄に述べるのでした。
孝雄は「やっぱり、独学じゃダメか・・・」と、靴職人の本場イタリアへ留学することを決意します。
孝雄と雪野は会えない期間、手紙とメールでやり取りをしていました。
雪野は四国へ戻り、孝雄はイタリアへ行ってから4年後、2人は会う約束をします。
孝雄は雪野のために作った靴を持って、いつもの公園のベンチで待ち合わせ。
2人は再開するのでした。
感想
今回の作品の全体的な感想としましては、2人がどうなったか?までは記載はありませんが、おそらくハッピーエンドだったと思われます。
2人がどのような幸せな関係になるのか、どのような未来になるのかは、あくまで読者任せなのです。
また、映画では、雪野の行動で「孝雄が好きなんだな」と察する必要がありますが、小説ではハッキリと「あなたが好き」だと表現されています。
ですので、孝雄と雪野の恋は、お互い本気だったんだと再確認できました。
小説「言の葉の庭」もぜひ、オススメしたい作品です。
ぜひ読んでみて下さい。
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